前半からの続き→
其の十一『テルマ×ルイーズ』(テルマ&ルイーズ)
この映画の鮮やか過ぎるラストシーンが、もうずーーっと前から目に焼きついて離れないんですけど、どうしたらいいでしょう。楽しい女二人旅をしていたはずが、ひょんなことから殺人のお尋ね者として警察に追われることになってしまったテルマとルイーズ。裏切りや苦しみの続く逃亡の果てに、遂に本当の自分を見つけ出した二人は、初めて“目覚めている気分”を知ります。自分自身の存在に意味があったこと、生きることに希望があったことを認めることができた二人は、それは最高の親友と一緒の旅であったからこそ見つけられたのだ・・・と確信するのです(*この辺は最後の素晴らしい台詞のやりとりで存分に堪能できます)。運命には逆らえる。意味の無いことなんてない。ブルーバードを爆走させ、希望の向こう側に最高の笑顔で飛び立っていくふたりのラストショットに永遠を感じました。
「最高のバカンスだったわ・・・ちょっと脱線したけど」
「それがあなたよ、本当の自分になれたのよ」
其の十二『乾闥婆王×蘇摩』(聖伝)
『貴方がいない天界で、生きていてもしようがないもの』超名言きたわああああ!!!乾闥婆王の台詞には、本気で魂をブチ抜かれましたね。自分の生き方を変えられない乾闥婆王は、その信念に従って、従者であり誰よりも愛する者であった蘇摩を手にかけます。が、その直後、泣き笑いの表情でこの台詞を呟く訳ですよ。そして倒れこむ瞬間に、ずっと云いたかった言葉を蘇摩にだけ囁くと。乾闥婆王の一途な愛が爆発した瞬間ですね。自分の信念に逆らって生きることは出来ないけれど、自分の愛する者を失ったまま生きることも出来ないという、ある種の不器用さが彼女の魅力だと思います。それでも乾闥婆王に生きて欲しいと最後まで思い続けた蘇摩が不憫ですが、宿命の楔を引きちぎる為には、この方法しか残されていなかったのかもしれませんね。
其の十三『燦雨』(中村可穂「花伽藍」収録)
小説で老婆で百合心中。いやいや、そんな設定如きで怯むのは正直勿体ないことよ!!!ごく一般的な女性として暮らしていた二人が、出会い、情熱的に求め合い、そして終の棲家で最後の安息を得るまでの様子が美しく淡々と描かれた作品なのです。設定自体はあり得ない感じですし、ラストの心中っぷりも、私の予想をはるかに超えた凄まじいものでした。しかし、それ故にこの作品には猛烈な迫力と、「こんなことが本当にあったなら、幸せだろうなあ・・・」と憧れるようなロマンが存在しているのです。ラストで、ホームヘルパーの青年が二人を発見したときの描写の見事さには、正直腰が抜けました。もう神がかっているとしか思えません。是非丸ごと通して読んでもらいたい短編小説です。
”ふたりは仲良く手をつないで、安らかに微笑みあっているように見えた。
燦々(さんさん)と降る雨に浄(きよ)められて、今まさに天上へと飛び立っていく、つがいの鳥のようだった”
其の十四『百合心中〜猫目堂ココロ譚〜』(東雲水生)
なんということだ・・・タイトルがすべてを物語っているではないか・・・。百合姫で連載していた漫画で、ココロ堂シリーズとして全3巻出てます。私、東雲先生このシリーズむちゃむちゃ大好きなんです!!甘甘ウハウハな百合物語で終わるのかと思いきや、たまに、ちょっとした毒というかダークなエッセンスを絶妙に挟んでくるのが、たまらなく素敵なのです。勿論、タイトル通りの百合心中系展開の漫画もしっかり収録されていますよ。1巻目の少女薄命に収録されていた“ステラ・マリス”も、心中的にGJな作品でした。とはいえ、東雲先生による希望のある(?)“心中展開”にも、しっかりと目を凝らしていただきたいと思いますね!
其の十五『ぼたん×香世』(牡丹と薔薇)
私、この二人が選んだ結末って、緩やかな心中なんじゃないかと思う訳です。ドラマのSP版のラストを観て、ホントそう思いました。旦那も子供も、自分を愛してくれる誰かも、すべてをかなぐり捨てて、何も見えない世界の中でお互いの存在だけを確かめ合いながら、ずっっと一緒に生きていくという。自分を取り巻くすべての社会との縁をブッツリ断ち切って、それこそお互いしか必要としない究極の状態に入り込む訳ですから、これを心中と云わずして何と言うのかと。奪い合って、与え合って、愛し合う・・・香世とぼたんは何度もそれを繰り返し、そうしてやっと本当に幸福だと思える世界を手に入れ、閉じこもることに成功したんだと思います。
其の十六『果実』(三島由紀夫「鍵のかかる部屋」収録)
三島由紀夫の描いた百合は、どう見てもエログロドロドロなのに、何故か孤高の美しさを感じてしまいます。濃厚な愛を重ね続けた為か、終わりの無い愛に飽和状態となり、倦怠と恐怖覚え始めている百合ップルが、ある“失敗”をきっかけに“人間”として完全に崩壊してしまう迄を描いた作品です。爛れて腐った愛によって身も心も人間性もぐちゃぐちゃに壊れきったふたりが、途方も無く醜悪で耽美な終わりを淡々と迎える様は、かなりのインパクトが御座いました。『どこへ行っていたの?お姉さまどこへ行っていたのよ。私を置いて行ったら、私すぐ死んでみせるわ。死ぬのなんか、何でもないわ』・・・昭和残酷百合心中も大いに有りだと思いました。。
其の十七『独眼竜正宗×飛竜』(銀河戦国群雄伝ライ)
超おぼろげな記憶なんですけど、脳内HDDには、アニメ版のライで百合心中シーンがあったとの記録がありました。爆炎に包まれる宇宙戦艦?の中、倒れた正宗を抱いて“正宗様は、私にとって全てだった。今でも、そしてこれからも”みたいな言葉と共に散っていってた気がします。*気迫で見つけました。アニメ第41話*金剛大爆発より
☆あとがき☆
漫画・アニメ・ドラマ・ゲームなどなど、いろんな形の終焉を見てまいりましたが、やっぱり百合心中は素晴らしいですね。ここには、愛の究極の状態が存在している気がします。快楽、宿命、解放、恋愛、永遠。あらゆる要素がここにはつめ込まれている様な気がしました。あと、改めて読み直してみて、自分の頭が少々イカれてるような気がしたんですけど、気のせいだと思うことにします。