作詞:奥井雅美 作編曲:矢吹俊郎
歌:奥井雅美
アニメ“少女革命ウテナ”OP主題歌。奥井雅美さんの傑作曲。今更ですが、読み方は『ロンドレボリューション』です。
ウテナは、90年代中盤に彗星のように現れ、アニメという表現方法の中に独特の美意識と個性を散りばめ、難解にして幾何学的かつ耽美な世界観を体現することに成功し、視聴者とアニメ界に猛烈なインパクトを残していった・・・なんというか、本当にすんげえ作品でした。
“潔くカッコ良く生きて行こう”
ウテナを語るに、これ以上の言葉は無いってほどに完璧なサビ歌詞。オープニングはこのサビから始まる訳ですが、もう一瞬のうちに心臓ワシ掴みってヤツです。
実は奥井さんは、この曲の作詞をした時は、ウテナの話の内容をほとんど知らされていなかったらしいです。ってことは、少女革命ウテナってアニメやるんでよろしく・・・ぐらいしか知らされてなかったのかもしれませんよね。仕方のないことですが、二番のメロ歌詞なんかは、ウテナの世界からはかなり遠ざかっていた感じでしたし。。
とはいえ“光差す校庭(ガーデン)”や“頬を寄せ合ってうつる写真の笑顔に・・・”のあたりの詞は、逆輸入という感じで、アニメ本編のタイトルやシーンにも、後々に影響を与えたのではなかろうか?とか、思ったりします。→*第四話タイトル“光さす庭・プレリュード”*最終話ラストシーン等。
“たとえ2人離ればなれになっても 私は世界を変える”
ああ・・・このラストフレーズの鮮やかさには何度も胸を揺さぶられますね・・・。1番のラストフレーズでは“たとえ2人離れ離れになっても 心はずっと一緒に”となっています。どんなに遠くに離れたとしても、革命へ進む心も、想い合う二人の心も揺らがない・・・という、強い決意のようなものを感じました。
この“輪舞−revolution”を、すべて“ララララ〜”で歌ったアレンジ曲に、“Rose&release”というものがあり、こちらはアニメ最終話のエンディングに使われていたのですが、非常になめらかで美しく、聞き応えのあるものに仕上がっておりました。
ウテナという物語は、ありのままの自分で生きることの苦難が描かれていました。
王子様に憧れた少女は、王子様そのものになろうとして戦い、傷つき倒れます。しかし、それによって“王子様は無条件にお姫様を守るだけの存在”という概念を自分の手で打ち壊せた少女は、高潔で気高く、大切な人の存在を全力で受け止めてあげられる、自分らしい“王子様”に為ることを最後の瞬間まで目指します。
その真摯な想いは、王子様の庇護のもとで従順にしているものがお姫様であり、それこそが自分であると思い込んでいた少女の心を動かし、変えていくのです。従順なだけがお姫様ではないと気づいた彼女は、王子様と共に生きていく為に、自分の意思で、自分から王子様に手を差し伸べるのです。
“王子様かくあるべし”という概念を変えてしまった少女は、王子様とお姫様の決められた物語を飽きもせずに続けようとする学園の中には居れず、外の世界に消えていきますが、彼女によって“お姫様かくあるべし”という概念を壊すことができた少女も、また彼女を探し求めるために、学園を去ります。
少女革命とは、少女が自分の身を固め包んでいた概念という名の鎧をはぎ落とし、身軽になった体で、以前より自由に飛び回り、ありのままに生きていく為に必要な行動であり、思想の転換であったのではないかと思います。
太宰治の小説“おさん”の一節にこんなのがあります。
『革命は、ひとが楽に生きるために行うものです(中略)気の持ち方を、軽くくるりと変えるのが真の革命で、それさえ出来たら何のむずかしい問題もないはずです』
おそらくウテナの主題であるところの“革命”も、それと似たようなニュアンスで用いられていたのではないかな〜・・・と、今更ながら想像してみました。
昔、なんとか野ばら先生が“美意識を持って生きることは大変です。それは世界を敵に回すことだからです”みたいなことをおっしゃっていた気がします。
個性的である事、自分らしくいる事。それは“ふつう”でいることが当たり前とされ、“ちがう”ことを死ぬ気で排除しようとする、この現実の世界では本当に辛く、難しいものです。少数派とされることの苦痛や嘲笑を、乗り越えられなければ、自分らしい強さを持って生きていくことさえ困難なのが、今の世界なのです。
ウテナは、そうしたある種の“自分らしさの貫き方”や“美意識”をデュエリストという存在に投影させることで、様々な愛や恋や生きる形を娯楽として見せていたとも思います。
男らしいこと、女らしいこと、兄妹であること、同性愛であること、親友であること・・・そうした“関係”ですら、知らず知らずのうちに決められた価値観がはめこまれているものです。
男はこうあるもの、女はこうあるもの、親友はこうあるもの・・・。しかし、そうした価値観に、自分自身の想いや美意識までも歪められているのではないか?と、ウテナやデュエリスト達は戦いの中で気がついていきます。そして、その瞬間に本当の革命は起きるのでしょう。
・・・なんでこんなに長くウテナの物語論を語っているのか、自分でも本当に謎ですが、それほどまでに、この作品に入れ込んでハマリ倒していたということなので、どうかご容赦下さいませね。百合的にも勿論見所はあるのですが、この物語はそれすらも要素であり形容に過ぎない、とんでもねえパワーがあります。今見ても、古さなんてまるでありません。一度手にとって見ていただきたい名作&怪作アニメでございますので、どうぞよろしく(何。
★おまけ★
最近見た、こっ・・・これめっちゃウテナっぽいやあああんな映画のシーンについて