2007年11月27日

『For フルーツバスケット』<岡崎律子>

『For フルーツバスケット』(2001/7/25) キングレコード
作詞・作曲・歌*岡崎律子

これほどまでに優しい曲を、一体全体どのようにしたら紡ぎだすことが出来るのでしょうか?岡崎律子氏、渾身の一曲。アニメ『フルーツバスケット』OP主題歌であります。

小さなハミングが聴こえた後、ゆっくりと目覚めていくように曲が始まります。春風のようにゆったりと暖かく進む伴奏に耳をくすぐられ、岡崎さんの囁くような優しい声に心が満たされていきます。それはまるで、柔らかな綿毛にそっと包まれていくような心地よさで、一瞬で魂を持っていかれそうな錯覚を覚えます。

岡崎さんは、原作を繰り返し読み込んで、その物語世界を完全に取り込んでから創作活動をされる方でしたので、フルバの魅力やメッセージ性は、楽曲や歌詞の中にしっとりと染み込んでいると思います。そのあたりは、歌詞を読んでみれば一目瞭然でございます。

“生まれ変わることはできないよ だけど変わってはいけるから Let's stay together いつも”

冷たい世界を耐え忍び、心の痛みに苛まれる日々であったとしても、“君”が傍に居てくれるだけで、いつかそれを変えていくことができる。“君”の存在によって、自分自身が変わり、それがいつかすべてを変えていくことにも繋がる・・・ということを示しているのだと思います。・・・優しさと救済の物語であるフルバにとって、これ以上の主題歌はないのではないでしょうか?

歌詞で云うところの“君”とは、主人公・本田透のことで間違いないでしょう。コミック版で考えると“僕”に当てはまるのは一人しか居ませんが、アニメがコミックの1〜6巻迄をベースに作られたと考えると“僕”は夾でも由希でも花ちゃん(?)でもアリなんだと思わされます。

また、緩やかに変化するメロディーには、人間として少しずつ成長していくキャラクター達が重なっていくようであります。

最初、私がこの曲を聴いたときは『ED主題歌っぽい曲だな』と感じた記憶があります。しかし、何度かアニメを見ていくうちに、花がゆっくりとほころんで芽吹いていくようなこの主題歌は、このアニメの幕開けにこそ相応しいものなのだな・・・と納得するようになりました。

監督である、大地丙太郎氏はこの曲に関して、<『今までに聴いたことがないようなアニメ主題歌にして下さい』と、半ば適当に依頼したら、本当に今までにない、想像以上の仕上がりで感動した>とのコメントを残されています。たとえ大雑把な依頼であっても、あくまで妥協することなく、物語の命題“音楽”というカタチにしていこうとした岡崎さんのプロ根性が伺えます。。



アニメでは、十二支の呪いについては解決されませんでしたが、夾が自分自身を受け入れる部分までが原作に沿って丁寧に作られていたと思います。慊人があの様な人間になってしまった理由も、原作とは別のものが用意されていました。

原作の完結を待ってから、アニメ化して欲しかったという気持ちもあります。しかし(*こんな“もしも”は云うべきではないのかもしれませんが)“もしも”そうだったなら、この歌曲は岡崎さんの手によって生まれなかったのかもしれません。そう考えると、このタイミングでアニメ化されたことにも意味があったのだと思えます。

私は、フルバという作品にさほど強い共感は持っていません

幸せに対する考え方(ファンタジー)、トラウマパレード、“優しい人”と“そうでない人”の極端な線引きなど、高屋奈月先生の感性にあまり納得・・・というか共鳴できなかったせいだと思います。しかし、この作品に救われた人や心を支えられたはたくさん存在していることだと思います。

例えば、フルバは“家族”についてのテーマを作中で、何度も取り上げています。家族だから親子だからといっても、必ずしも愛し愛される幸福な関係が築ける訳ではない。そもそも“家族仲良く”という考え方自体が固定観念(というか幻想)であるのだから、それならば自分が望む新しい家族のカタチを他の誰かと模索していけばいいのではないのか?そのような問いかけが、様々なエピソードの中に見え隠れしているような気がします。

作中で示される、このような新鮮な考え方に、ハッと心を動かされた人も多いでしょう。つまるところ、フルバは透の言動を通して、各キャラがそうありたいと願う家族像をゼロから再び作り上げていく物語ではなかったのだと思うのです。

そのような“家族”の視点で、岡崎さんの歌う『For フルーツバスケット』を聴いてみると、また少し異なる捉え方ができて面白いと思います。アニメを見ていない人にも、一度聴いてみて何かを感じ取って欲しい一曲であります。



<拍手お返事>

>酸欠静留ファン様
勝手に名前をつけてしまってすいません(ヲイ。コメントありがとうございます!!気付けば12月・・・静留様爆誕の月。ということで、静留ソング提供感謝の極みでございます。“みとせのりこ”さんはクロノクロス以降全く感知していませんでしたが、最近は結構精力的に活動されてたのですね〜。「わたしのありか」「Light & Dark」、機会があれば是非聞いてみたいと思います。静留さんは乙女・・・勿論、心に刻みます★すんごく遅くなりまして失礼しました。これからも酸欠様が、ウハウハアニソンライフをすごせますように!!

>11月17日×1
ありがとうございます!!
>11月25日×10
10回感謝でございます!
>11月26日×2
ありがとうございます!


この記事へのトラックバックURL