作詞:interface 作編曲:inazawa
歌:anNina
アニメ『ひぐらしのなく頃に解』ED主題歌。題名の読み方は『タイショウ・アー』。anNinaは、inazawaさんとAnnabelさんの二人組みユニット。Ann(abel)+ina(zawa)が由来らしいです。
“あなたの亡骸(なきがら)に土をかける それが禁じられていたとしても”歌い出しの歌詞がコレです。しょっぱなから、強烈なインパクトで飛ばしてきますねえ。。歌詞は総じて純文学風で、耽美な犯罪小説を読んでいるような錯覚を覚えます。
また、ボーカル・Annabelさんの淡々とした歌声は、蝋燭の炎のように時折不安定に揺らめいて、独特の妖しさを放っております。無表情な声に紡がれる曲の向こうには、果てしない暗闇が拡がっているようで、聴けば聴くほどに、胸の辺りがザワザワと騒ぎ出します。
死に対する焦がれや、美しい“終わり”に対する憧れ・・・というのは、ちょっと内向きに物を考える人ならば、誰でも一度くらいは持つものではないでしょうか。思春期の頃はよく感じていた、自分の中の残酷で暗い部分を、再び呼び起こされるような、そんな歌だと思います。
anNinaインタビューを読むと、『ひぐらしのなく頃に』の世界観を壊さないように、少しでも物語とシンクロするように、大変苦心されて歌作りをされたことが、伺えます。
・ひぐらし第一期ED主題歌『why,or why not』の雰囲気を意識したこと
・曲を構成する3/4拍子は、輪廻転生のイメージであること
・ボーカル(作曲者も?)は、原作を全プレイ済みであること
などなど。。かなり気合が入っています。ひぐらしワールドにどっぷりと浸かり込み、客観性よりも主体性に重きを置いて、この楽曲を作り上げたのでしょう。
“ひぐらし”らしさは、2番目の歌詞の方がより強く感じられると思います。私は、2番歌詞=梨花ちゃんの心情をイメージしたのではないかなと感じました。罪と罰が何故あるのか・・・、その問いに梨花ちゃんが、すべてを振り返りながら答えているようです。
1番目の歌詞は抽象的で何が何だか??という方でも、2番まで聞けば、『対象a』が示すひぐらしワールドというものを、すんなりと理解することができると思います。
ちなみに、題名の『対象a』は精神分析家ラカンが唱えた概念の一つで、“欲望の対象”という意味があります。この曲自体も、ラカンネタが満載の模様。“あなたの亡骸に土を・・・”の歌詞も、ギリシア神話のアンティゴネーのエピソードから引用しているみたいですしね(*アンディゴネーの話はラカンも引用)。
*アンティゴネー→ギリシア神話に登場。オイディプス王の娘。反逆者として埋葬を禁じられ、野ざらしにされていた兄の死体に堂々と土をかけ、仮の葬儀を行う。その後、王命を破った狂女として王に極刑を言い渡され、自らの命を絶つ。
現実の世界(社会)には、ルール(法)というものがありますけど、それは絶対的に正しいものではありません。あくまでも、その時代・その社会・そのコミュニティの中で、上手く生きていくために、みんなが共有しなければならないものというだけのことです。しかし、そのルールとは別の、自分だけの(自分の信じる)ルールで行動しようとするとき、それは現実のルールから見れば“罪”であることがあり、“罰”せられることがあるのです。罪とは何か。罰とは何か。アンディゴネーのエピソードは、それを痛切に突きつけます。
考えてみるとこれは、物語に隠された様々なルールを見破るゲームである(?)『ひぐらしのなく頃に』にピッタリなお話であるかもしれませんね。
あと、ラカンは昔ちょっと勉強したんですけど、当時でさえチンプンカンプンだったので、あまり大きなことは言えません。。なんか間違ってる予感も(死。
2、ロートシルト Rh-
作詞:interface 作編曲:inazawa
割と普通の大人しい曲だと思いますが、不気味な編曲っぷりがミョーに不安を煽ります。対象aの雰囲気と似た感じなので、CDとしての統一感もありますね。
歌詞は救いようのない暗さに溢れていますが、反面Annabelさんの歌声には柔らかな明るさがあって、そのギャップが、ちょっと不可思議で面白く感じました。
*拍手お返事*
・8月15日の拍手×1の方、ありがとうございます!
・8月16日の拍手×10の方、ありがとうございますです!
・8月20日の拍手×1の方、ありがとうございます!
みなさまのお陰で、なんとか今でも続けられてます。これからもよろしくお願いします!
<ひぐらし関連レビュー>
*ひぐらしのなく頃に(島みやえい子)
*かけらむすび(片霧烈火、他)
*嘆きノ森(彩音)
*Thanks / you(M.Graveyard(*dai))