2007年07月27日

『Thanks / you』<M.Graveyard>

『Thanks / you』 M.Graveyard(dai)

パソコンゲーム『ひぐらしのなく頃に 解』で、BGMなどを提供されたdaiさんによる個人(同人)CD。ひぐらし解収録曲7曲+オリジナル13曲で構成されています。ある意味公式CD。

パソコン版『ひぐらしのなく頃に』の、同人CDのレビューって、何ですかそれ?という方も大勢いると思いますが、たまにはこう、趣味に突っ走りたい瞬間もあるのですよ。需要は、私にさえあればよいのです(何。ということで、ネタばれをギリギリ押しとどめたレビューになりますので、未プレイの方はご注意ください。

1、Thanks

『目明し編』のオープニング主題歌。ふわりとした穏やかな優しさに包まれた曲。落ち着きのある、静かな作品ですが、曲調は一貫して明るいです。

『この先の未来にどんな素敵な出来事が待っているのか?』
宿舎を抜け出した詩音が膨らむ期待と若干の不安を抱えながら、興宮に向かう車の中で眠りに落ちる・・・という最初のシーンには、ピッタリの選曲でございますねえ。

“淡い夢”から始まり、“醒めない夢”で終わる『目明し編』という物語、すべてを象徴するような主題歌であると思います。

“Thanks”がなければ、confessionもyouも生まれなかったということで、この曲はひぐらしの音楽史(?)においては重要な意味を持つ一曲なのではないでしょうか。


2、Iru

例えば、親しい誰かとなんでもない会話を楽しむ瞬間とか、密かに好感を持ってる人とさりげなく過ごす時間とか・・・そんな何気ない日常の中にある、どこか心地よさのある“空気”をじんわりと味わわせてくれる曲です。

3、陰

一人ぼっちの寂しさ・・・それに似たものを感じさせる曲です。
信頼できる相手に、正直な自分の気持ちを伝えたいけれど、それがどうしても上手くできない自分のもどかしさ・・・。そんな何とも言葉に出来ないような、弱弱しさや孤独を表現した曲であるように思いました。

4、Soul scour

某キャラが事件の真相に一歩近づいたシーンにて使用(祭囃子編)。
某キャラが事件の真相から思いっきり遠のいたシーンにて使用(目明し編)。
某キャラが事件の真相から何億光年も遠のいたシーンにて使用(罪滅し編)。
鋭さと緊迫感が同居した一曲です。

5、you (M.Box風)

TIPSを参照する時に流れるyouのアレンジ版。鉄琴を叩くような冷たく固い音色に、初期は特にビビらされました。

6、Confession

詩音の見た、現実の終わり夢の続き
ラストのモノローグにて流れるこの曲に、魂を持っていかれた犠牲者は大量に存在すると思われます。1分19秒辺りから、徐々に“you"の曲に変化していくところとか上手すぎて死ねますね。

あと『目明し編』で最激痛シーン(2度目)の最後にもこの曲が流れてました。恐怖に屈せぬ強さを持ち続けた“彼女”と、その強さの前に敗れ去った“彼女”の対比を思い浮かべながら、この曲を聞くと、また味わいもひとしお違います。

強くあり、哀しくあり、脆くある。振り子のように不安定に揺れ動いては、簡単に誰かを傷つけ、同じように簡単に傷ついてしまう。そんな人の“心”の、うつろいゆくあり様が、Confessionという曲の向こう側には存在しているように思います。


7、you

『目明し編』エンディング主題歌。Confession→youという、この凶悪な流れに魂を持って(以下略。しかし、“you”の万能曲ぶりには、改めて感嘆いたします。

“you”は余計な飾りをすべてそぎ落とし、その旋律のみをもって、ひぐらしの大きな世界観を表現しようとした曲であるように思います。

そのような、いわばすっぴん状態に近いシンプルな曲であるからこそ、聴き手(ゲームのプレイヤー)は、ゲームを通して抱いた、物語やキャラに対する様々な感情を、“you"という作品に思うように投影することが出来るのではないでしょうか。

そしてまた、素顔が美しければ美しいほど、さらに素敵な化粧施したくなるのも世の必定ってものであります。

youは、作者であるdaiさん自身が、アレンジを加えたバージョンも存在していますが、それ以上に多くのファンの手によって、色々な姿に変身させられている作品でもあります。daiさん自身が悪意のないアレンジならOKと明言しているからという理由もありますが、こうしたアレンジVerの隆盛は原曲(の魔力)魅せられた人がたくさんいるということの証でございましょう。

歌詞カードの、daiさんによる楽曲解説によると、このyouは『「切なさと優しさ、希望と絶望、強さと弱さ」湧き上がる情感すべてをたたきつけた』作品らしいです。

“あなた”に贈るのは“感謝”なのか、それとも“赦し”なのか。daiさんが込めた渾身の想いと共に、じっくりと耳を傾けてみて下さい☆

8、空夢

月明かりに照らされた屋上での決着シーンが、記憶をよぎります。人が背負う罪、償いと後悔の気持ち。それらをすべてひっくるめて、優しく包み込むような一曲です。

9、そらのむこう

『祭囃子編』のEDロールでは、この“そらのむこう”がボーカルつきで歌われていました。緩やかに空を流れる雲のようなのんびりとした、それでいて温かみのある楽曲には、部活に興じる彼等の楽しそうな日常場面を思い起こさせます。今まで傍観者の側にいた“彼女”が、仲間達に本当の意味で受け入れられるシーンでも効果的に使用されていました。

10、競争

おもちゃ売り場とかで流れてそうな能天気曲。こういうのを聞くと、脊髄反射で沙都子を思い出してしまいますね。

11、月影 (arrange)

純和風な風雅さを感じさせます。

12、夢想

静かに盛り上がり、静かに終わる、線香花火のような曲。

13、夢想(arrange)

daiさんのアレンジ力の凄まじさを肌で感じられる一曲。12曲目の“夢想”を地味な普通の曲だなあとか思ったりしたら、このアレンジverで度肝抜かれること受け合いなのですよ。にぱー☆

いやしかし、歌詞カードでdaiさんが、「アレンジはどちらかというと苦手・・・」ということを匂わせていたので、とても信じられない!!って感じです。このdaiさんらしい、ドラマチックさがたまりません。

14、feel

1分14秒あたりから“Birth and Death”の曲に接続。本編でも使われていましたが、あまり印象には残ってなかったり。。

15、月影

純和風な(略。アレンジVerよりも、祭りっぽいギミックというか、効果音が多用されています。祭囃子編をイメージしたのかな?とか妄想。

16、久遠

まどろみの世界に引き込まれる様な・・・。

17、Birth and Death

もう、ひぐらし解のレナと云ったら、イコールこの曲って感じが致します。レナ手ばなしで慟哭するシーンでこの曲とかマジでヤバ過ぎでしたよ!!

あと圭一がずっと忘れていたことを『思い出し』『悔いる』あのシーンでも使われていましたが、もうこっちは、文章の上手さもあって涙腺爆発かっつーぐらいの破壊力で御座いました。

あと皆殺し編のラストとかも凄まじくキマってましたね。

『生と死』という、ひぐらしの核心に迫るテーマが、この曲には詰めこめられていると思います。40秒〜盛り上げ方とか、もう、感情を揺さぶられまくり。ろむろむ的には、youに次ぐ、深ーく思い入れのある作品です。


18、想い

爽やかな風に頬を撫でられるような、大らかな優しさをたたえた曲です。1分29秒から、youの旋律が徐々に入ってきます。

19、you(vocal)

youのアレンジ+ボーカル版。ボーカルは、癒月(ゆづき)さんという方です。自身が作詞もされたということで、癒月さんの詩音への思い入れが結晶化した作品であると云えるでしょう。

癒月さんの場合はyouを、詩音のテーマソングだと解釈したのでしょうね。(*つーか、一般的にはyou=詩音な風潮なのかしらん?)詞を聞くと、言葉の一つ一つに詩音の気持ちが丁寧に刻まれているのがよく伝わりました。

音の綺麗さで云えば、やはりかけらむすび収録の『you-Visionen im Spiegel』が文句なしに上だと思いますが、この若干音が篭った、ソボクな感じも捨てがたい(?)ですね。

私は、『you』=『詩音の曲』だという認識は今でもそんなにありません。どっちかというと、ひぐらしキャラみんなを表した曲なんじゃないかと、今でも思っていたり。・・・あんまり詩音好きじゃないせいかなぁ(えー。

20、想い(vocal)

こちらも癒月さんのボーカル付きverでございます。“想い”の詞では、『you』=『ひぐらしキャラの曲』という感じが致しますね。

ようやく辿りついた、最後の場所。光に満ち溢れた世界への感謝、すべての人たちへの感謝をこめて、最後に『ありがとう』という言葉を入れているのが素敵です。

21〔data Track〕

*サンプル試聴『Thanks / you』→ココ(daiさん公式HPより)



<ひぐらし関連レビュー>
*ひぐらしのなく頃に(島みやえい子)
*かけらむすび(片霧烈火、他)
*嘆きノ森(彩音)
*対象a(anNina)

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