作詞:有森聡美 作曲:大森俊之
歌:松澤由美
劇場版『機動戦艦ナデシコ』ED主題歌。
怒涛の迫力展開で突き進んだ劇場版のエンディングとなると、物凄いハイテンションな曲か、物凄くしっとりした曲が来ることが多いですが、劇場版ナデシコの場合は、後者の“静かに聴かせる系”の曲で物語を締めくくりました。
しかしながら、この『Dearest』は、落ち着いた大人の曲も、行き過ぎると印象がなくなってしまう・・・という、残念な例になってしまっているような気が致します。
劇場版は何度も繰り返して観ましたが、このエンディングは、何故かほとんど私の記憶に残りませんでした。シリアスと独特のギャグを詰めこんだSF大活劇のフィナーレには、やはりもっと派手さのある、賑やかな曲が合っていたのかなと、思ったりします。
もちろん曲自体は決して悪いものではありません。むしろDearestは楽曲よりも声そのものの魅力を全面に押し出そうとしている作品の為、松澤さんの柔らかい声をじっくりと聴くことが出来ると思います。
ただ、『YOU GET TO BURNING』に慣れていた身としては、少し物足りなさの残る作品に思えてしまいました。
2、『ROSE BUD』
作詞:有森聡美 作曲:大森俊之
どちらかというと私は、この『ROSE BUD』の方が、劇場版ED主題歌に相応しいと思っていました。ドラマチックなメロディラインに、ちょっとスレた感じのハードな歌詞。松澤さんの地に足の着いた、重みを感じさせる歌唱が胸を打ちます。
歌詞中では、あなたの面影(+愛+想い)によって育まれた『夢』を『薔薇のつぼみ』に例え、その花こそが今の“私”を突き動かす力になっているということが示されています。
失うものもなく、冷めた目で消極的に生きてきたわたしに、薔薇の蕾を与えてくれたあなた。あなた(アキト)の為ならどんな無茶なコトだって出来るし、むしろ死んでも構わないとさえ思っちゃったりしたりして(何。
・・・ルリちゃんの歌にしては、ちょっと歌詞が過激すぎる気もしますが、それもまたよし!
ルリルリこと、南央美さんがカバーした『ROSE BUD』も一部で話題になりましたが、こっちは作品としてはちょっと微妙だった気がします。。いえ、一歩抑えた感じの歌い方もルリの無機的な印象を彷彿とさせますし、ルリのテーマソングとして南さんカバー版『ROSE BUD』を聞くなら、申し分ないと思います。
しかし、先にこの松澤Verを聞いているとどうしても、歌い手としての“アラ”が見えてきてしまい、聞き辛さだけが耳に残ってしまうのです。
*とはいえ、『本物の歌手が歌う』か『本物の声優が歌う』かどちらがいいか?という問いは直感的な好き嫌いの範疇になるので、その辺は個人の判断にお任せ致したいと思います。
それはともかく、発表後に南さんがカバーを行ったことからしても、『Dearest』と『ROSE BUD』はどちらも、ルリの心情を反映した、ルリのキャラクターソングと考えて間違いはないでしょう。
『ROSE BUD』とは『薔薇のつぼみ』の意味です。
テレビ版では、ルリのアキトへの想い(恋心)は、薔薇のつぼみというには程遠い、あまりに淡く幼いもののように見えました。しかし劇場版にて、少し大人になったルリは、大人になった分だけ、その想いや人間性を成長させていったと考えられます。ルリが大切に育てた薔薇のつぼみを、思い浮かべながら、この『ROSE BUD』を聴いてみてはいかがでしょうか?
ナデシコ第二期が立ち消えになった今としてはすべてを妄想するしかないのが、苦しくも悲しいトコロではありますが。
◎7月6日、8日、10日に拍手を下さった方に、心からの感謝を☆