2009年02月16日

『夢の足音が聞こえる』<水原薫>

『夢の足音が聞こえる』 (2008/11/26) Lantis
歌:水原薫
作詞:畑 亜貴 作・編曲: 虹音

アニメ『喰霊−零−』ED主題歌。

楽曲の派手さとハードさにより、茅原さんのOP主題歌の方がインパクトが強いですが、私はむしろこのED主題歌に超絶ハマッてしまったクチでございます。

歌唱自体はなんだか“惜しい”という気がします。ややヘタウマな感じがしなくもないです。。しかしッ!!しかししかししかし、この曲はアニメ版『喰霊』のもう一人の主人公、“諌山黄泉”という少女の姿を完璧に投影することに成功した絶妙なる作品であると、私は思います。

黄泉役の声優さんである水原薫さんが歌っていることにより、黄泉というキャラの個性が全面に押し出されているのは勿論のこと、この切なさをえぐるような曲調と、それを鋭く刻みつけるようなギターの音、妹のように大切に思ってきた“神楽”に対する変わらぬ愛情と、歪んで変わってしまった自分自身への諦観を綴った歌詞など、どこを切り取っても黄泉が心の奥で守り抜いてきた想いが溢れ出てくるようです。



“いつか誓ったのよ 自分の心へと 歎きの渦にのまれた 君を助けたいと”

母親を失い悲嘆に暮れる幼い神楽に優しく声をかけ、遊びを教え、明るい世界もあるんだと教えてあげた黄泉。その行動原理には、神楽を守り、助けてあげたいという気持ちから来ていたのでしょう。喰霊最終話の黄泉の(*)独白から見ても、それは間違いありません。

(*)独白→『私の本当の望み、本当の願い・・・それは神楽・・・あの子を守りたい。あの子を全ての不幸から守りたい。あの子を全ての災いから守りたい。あの子を傷つけるもの、あの子を危険に晒すもの。あの子に災いをもたらすもの。その全てを消し去りたい』

・・・神無月の巫女を思い出させるような熱い百合台詞を吐いてくれちゃってますね。というか、ところどころ神無月の巫女(や過去の百合アニメ)を髣髴とさせるシーンが多かったアニメだったような気もします。イメージアルバム“百合ームコロッケ”のネーミングのノリから考えても、やっぱり多少は意識して作ったのではないかと思います。まあ、神無月ではすべての決着後に伝説級の激ラブ展開が繰り広げられるんですけど、喰霊の場合はものすっごいアッサリと〆られてて、ええええ〜最後ぐらい神楽の黄泉に対する激しい告白が聞きたかったなあああ〜とか勝手に思ったり(略。

“幸せだったと あの頃だけ抱きしめ 遠ざかる夢の足音 胸に刻み込むよ”

タイトルにもなっている“夢の足音”、それは神楽と共に過ごし、これからも続くはずだった幸せな未来が、すべて現実では永遠に叶うことの無い“夢”となってしまったことを示しているのではないでしょうか。

“優しさは媚薬 一滴の溜め息 幻と君の足音 響く場所は”

中盤の歌詞を見ると、“夢の足音”とは“(君の=神楽の)夢の足音”ということがわかります。自分に甘え、懐き、優しさを与えてくれた神楽は、もはや人の道を踏み外してしまった黄泉には触れることも出来ない幻の存在であり、どんどん自分から遠ざかり、離れていく彼女の足音を、黄泉はただ静かに胸の中で聴くしかできないのです。

アニメEDでは、8話以降、曲のラストで歩き続ける黄泉の傍へ走り寄ってくる神楽の姿が無くなり、黄泉は一人で歩き続けて消えていく・・・という演出がなされているのですが、これは黄泉には神楽の足音が聞こえなくなってしまったという事なのかもしれないなあああとか妄想してしまいました。遠ざかっていったのは、神楽だったのか、それとも黄泉だったのか・・・色んな風に解釈できるかもですね。



2、delight and alive
こ・・・こっちも凄まじいほどに、黄泉の神楽ラブパワーが炸裂しておりますね。というか、ものすごくアニメ準拠な歌詞になっているように思います。

“分かち合えば 満たされていたら いまは並んで歩けたのかもね”
“最後のとき 引き返せたなら いまも並んで歩けたのかもね”


8話以降、黄泉が人を捨て、あちら側へ陥ってしまった“後”で、黄泉の中に微かに残った彼女自身が、すべてを俯瞰的に眺めて、諦めを含みながら『どうして一緒に並んで歩けなくなったのか=どうして神楽の足音を夢で聞くしかできなくなったのか』ということを自問自答しているような歌詞であるような気がします。

“伝えたいよ 伝えきれないよ 今更だよと微笑む 触れたかった 熱い涙”

この2番のサビには、最後の瞬間に黄泉が何を考えていたのか・・・らしきことまで書かれており、畑亜貴神の底力を見せ付けられる思いが致します。神楽と抱き合って、でもその表情は見えず、涙をぬぐってやることも出来ず、ほんの短い一言にしか自分の気持ちを託せ無かった黄泉の哀しみが、ひしひしと胸に迫ってきます。なにこの姉妹・・・最高ですやん。。

喰霊は百合目当てで見始めたんですけど、『愛する者を、愛を信じて殺せるか』という重い主題が、互いを労わりあって生きてきた姉妹の最後の別れの瞬間までのしかかってくるとは思いもしませんでした。最終回で見せた“黄泉”の本当の決意は、視聴者にしかわからない仕様になっていますが(それもまたニクイ演出なのですが)、人としての自分を失っても、ただ一人“神楽”だけを愛し守ろうとした姿はマイベストオブ百合姉妹の5本の指に入る見事さでした(何。

喰霊は、当たり前のことながら純粋な百合作品ではないですが、ヌータイプでスタッフが『黄泉は神楽を愛しています。それは神楽を見つめる目を見てもらえば一目瞭然・・・』みたいなインタビュー記事を載せていたので、二人の姉妹(百合)愛だけはマジモンだということを理解して観れば、百合オタなら倍々増しで楽しめると思います。アニメを観て、思わず喰霊を2〜3冊買ってしまったんですけど、黄泉と神楽の描写は結構サラッと描かれていて、百合目当てで買うと肩透かしを喰らってしまうかもですねー。あと、某アニメイトは喰零のグッズ展開するのはいいんですけど、なんでしょっぱなにブチ殺された防衛省第四課のファイルとか下敷きを売っているのかと問いたい・・・。黄泉神楽なグッズを全く目にしてないんですけどもおおお!!!





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この記事へのコメント
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

いや、ろむろむさんならやってくれると信じて
じっと待っていました。
喰霊ー零ーのリクしようかなとずっと思ってたのですが、
ろむろむ氏がレビューしない訳がないと、
その日がくるまで待ってましたよw


『夢の足音が聞こえる』

ちょ、なに、この解釈、素晴らしい。
つか、私が考えていた以上に、こう、
溜飲が下りる感じの完璧な解釈。
やっぱうまいです、ろむろむさんすごい。

もちろん通勤中はヘビってますよ。
私もEDのこの曲は、黄泉の神楽への尽きせぬ思い、
伝えきれず、魔道冥府に落ちてしまった自分が、
夢見、それでも最後まで守りきりたかった
切ない気持ちがこれでもかって詰め込まれていて、
もう、百合好きなら、たまりませんよね!

確かに黄泉はノリちゃんと付き合っていましたが、
それは乙女が恋に恋するごく普通の恋愛感情だった訳で、
神楽に対する深い愛情とは全く別のものでしたよね。
命をかけて、自分を落としてまで守りたかったのは
神楽の笑顔だった。本当の、真実の愛を与え、
欲していたのは神楽だったんだなと、しんみりします。

今回も素晴らしいレビューありがとうございました。
これからも楽しみにしています!
お目汚し失礼しました。
Posted by ユリミテ at 2009年02月17日 20:01
>ユリミテさん

うわわわわーーーーい!!やっぱ百合はええわ心のオアシスススス!!!ということでお久しぶりでございます!!
いやあ〜、お待たせ致しました!!というか待ってて下さってありがとうございました☆
ユリミテさんからの百合念波を無事に受信できたようで、まだまだ私のアンテナも捨てたもんじゃないなと(何。

喰霊はマジで百合的にも見所満載なお話でしたね。確かにノリちゃんという存在はありましたけど、ユリミテさんのおっしゃる通り、それはごく普通の乙女の恋愛感情から来たものであって、黄泉にとっては生きることも死ぬことも、全ては“神楽”次第なほどに、彼女を心の底から愛していた訳なんですね。極限状態の中でも、“神楽を傷つけるものは、それがたとえ自分であっても許さない”と、言い切れる黄泉の言葉が切ないです。。

黄泉が身体の機能を失って云々のくだりは、あざと過ぎる気がしてあんまり好きじゃないんですけど、この回で描かれていた“決定的なすれ違いの場面”は見事だったと思います。。誰よりも心が繋がっていたふたりなのに、ほんの少しのコミュニケーションが欠けていたというそれだけで、取り返しがつかないぐらい遠くへ離れていってしまうとか・・・黄泉も神楽もあまりにもかわいそう過ぎるるる。

歌詞の百合電波解釈も、いつもの倍増しの勢いで書いたので、そう云っていただけるとママママジで嬉しいです(*^▽^*)。私も通勤時間のヘビロテの中で妄想パワーを膨らましてました!しかし、この曲・・・一回ハマるとヤバイですよね・・何度も何度も繰り返して聴いてしまうというか、未だに中毒です。黄泉の切なさのすべてがつめ込まれてる、凄い百合ソングだと思います。

これからまた、(出来れば)ボチボチ書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしまする〜!!
共に百合の花を咲かせまくっていきましょう!!
Posted by ろむろむ at 2009年02月19日 00:18