2008年08月17日

『MISSION(FUGA)』<angels>

『MISSION(FUGA)』<angels>(2004/2/25) エイベックス

アニメ“エリア88”OP主題歌。

J.S.バッハ作曲の“小フーガ ト短調 BWV578”アレンジ作品出だしの部分は、ワーグナーの“ワルキューレの騎行”に思えます。元々はオルガン演奏用に作られた鍵盤楽曲。1700年頃に作られた名曲が、2004年に大胆なサイバーアレンジを受けて(しかもアニソンとして)甦った模様です。

小フーガは、旋律の美しさが印象的な有名曲ですが、オルガン演奏などを聴くと、あまりにも雰囲気が荘厳すぎて、聴く人によっては心が不安にざわめくかもしれません。私は、どちらかというと“哀しげな曲”に聴こえるんですが、前奏を省いていきなり主旋律を持ってくるところに堂々とした、ワイルドなもの(?)を感じる人もいるでしょう。。小フーガは割とシンプルで馴染みやすい楽曲だと思うので、トランスとして構成しなおすのも、あまり無理がなかったのかな〜と思います。

この“MISSION(FUGA)”ですが、演奏はバイオリンデュオである"angels"が担当しています。『サイバートランスによる、クラシックのカバー』を試みた作品をたくさん発表してきた人たちのようです。ということで、スピード感溢れる鬼ヴァイオリンが小フーガの中を縦横無尽に飛び回りまくっているのですが、これがなかなかに良いのです。

こういう形の音楽って、巷ではクラシックトランス(クラシカルトランス)と呼ばれているみたいです。トランスって云うと、“ケミカルな怪しい薬を飲んでから聞くとサイコーにハイな気分になれる曲”って言う偏見が、私の中にずっとありましたけど、こうして改めて聞くと、なかなか興味深いものだな〜と思ったりします。むしろ、この既存のクラシック音楽をトランス編曲する・・・という試み自体が、面白いですね。

*あと、このCDはCCCDという恐ろしき負の遺産の時代に生まれたものですので、その辺気をつけておいたほうがいいです。ほんとコピーコントロールCDは死ねよって感じですね☆

<エリア88簡単あらすじ>
主人公・風間真は旅客機機長を目指していたが、フランスでの研修後、幼馴染で同僚の神崎悟の罠に嵌められ、内戦が続くアスラン王国の外人部隊・エリア88に入隊させられる。生きてエリア88から脱出するには、高額の違約金か契約が終わるまで生き延びるしか方法はない。真は神崎を憎しみ、婚約者のもとへ戻るという目的の為に戦闘機パイロットとして戦い続けることとなるが・・・。

OPアニメは、アニメーターが全気合全根性を注ぎ込んだかのような映像になっており“MISSION(FUGA)”とおそろしいほど相性が良いものに仕上がっております。これを見ると、本編への期待値はうなぎのぼりってなもんでしょう。・・・しかし、アニメ版エリア88の本編は、残念ながらいまひとつな感じでした。原作が結構陰鬱としたお話なので、重たくなるのはわかるんですが、重いばかりで物語展開がさっぱり面白くないというのは・・・。

加えてアニメにおける最も重要なシーンである“空中戦”で、トランス楽曲を使いまくるのはいかがなものかと強く思いました。OP主題歌に、クラシックトランスを使うこと自体には新鮮さを感じましたけど、空中戦の劇伴に軽やか過ぎるトランスを使ったりするのは、戦闘の迫力半減もいいとこです。当然のことながら、音楽というのは映画にしろアニメにしろ重要な役割を担っているものなので、この、なにか“斬新”の意味を取り違えているようなBGMには考えさせられてしまいました。



<余談>
で、何故に突然エリア88の主題歌を取り上げようかと思ったのかといいますと、こないだ単身『スカイ・クロラ』を鑑賞しに行ったからなのであります。原作未読・あらすじ未見の私としましては、緻密で壮大な超CG空中戦に圧倒されたり、細かなキャラの動きに魅せられたり、色々考えさせられましたけど、なんか見た後何故かすごく暗い気持ちになりましたね。。エリア88は僅かな希望が見え隠れする絶望的な世界で、希望を目指して戦い続ける生々しい人間の姿を描いてましたけど、なんかスカイ・クロラは始まりの地点からして違うところにありました。絶望の中の絶望の中の絶望の中で、果たして希望なんてものがあるのかどうかを鑑賞者に委ねているような気すらしました。しかしこの空中戦はほんとに魅入ってしまうぐらい凄いものでしたので、要チェックだと思います〜。



<拍手お返事>
>8月15日×1 ありがとうございます!


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